Welcart 2.12系へのセキュリティアップデートに伴い、今回、管理している50サイト以上のWelcart導入サイトを調査しました。
そのうち、現在もECサイトとして使用されている30サイト以上について実際にアップデート対応を行いました。
標準構成のサイトでは、今のところアップデートによる大きなトラブルは確認されていません。
ただし、すべてのサイトで単純に「更新ボタンを押せば終わり」というわけではありませんでした。
特に、
- Welcartをカスタマイズしているサイト
- WCEX DL Sellerを使用しているサイト
- WCEX Auto Deliveryを使用しているサイト
- WCEX Couponを使用しているサイト
については、アップデート前の確認が重要です。
実際に作業した中では、WCEX Couponの更新ボタンが表示されないケースもありました。
この記事では、Welcart 2.12へのアップデートにあたり、実際に30サイト以上を対応した際に確認したことや、つまずいたポイントをまとめます。
なぜWelcart 2.12へのアップデートが必要なのか
Welcart公式では、Welcart 2.12でセキュリティ強化のための重要な変更が行われています。
Welcart 2.12 更新手順・事前確認(公式)
今回修正された脆弱性を狙った攻撃も確認されており、Welcart 2.11.x以下で運用しているサイトについては、最新版へのアップデートが案内されています。
ECサイトでは、お客様の個人情報や注文情報、決済に関わる処理などを扱います。
そのため「サイトが普通に動いているから、そのままでいい」と考えず、セキュリティアップデートの情報が公開された場合は、内容を確認したうえで対応することが重要です。
アップデート前に確認したこと
今回、いきなりWelcartの更新ボタンを押すのではなく、各サイトについて事前確認を行いました。
主に確認したのは以下です。
1. ファイルとデータベースのバックアップ
まず、WordPressのファイルとデータベースのバックアップを取得しました。
万が一アップデート後に不具合が発生した場合、更新前の状態へ戻せるようにしてから作業します。
ECサイトの場合、注文データなども存在するため、特に慎重に対応したい部分です。
2. PHPのバージョン
サイトで使用しているPHPのバージョンも確認しました。
Welcart本体だけでなく、使用している拡張プラグインによって対応するPHP・Welcartのバージョンが異なる場合があります。
そのため「Welcartだけ最新版にすれば大丈夫」と考えず、サイト全体の環境を確認してからアップデートしました。
3. 現在のWelcartのバージョン
現在使用しているWelcartのバージョンを確認します。
特に長期間アップデートしていないサイトの場合は、現在の環境と最新版との差が大きくなっている可能性があります。
4. Welcartのカスタマイズ有無
今回、特に重要だったのがカスタマイズの確認です。
Welcart 2.12では、これまで内部的に使用されていた「uscesid」という仕組みが廃止されています。
そのため、uscesidを利用した独自カスタマイズが存在する場合、そのままアップデートすると該当機能が正常に動作しなくなる可能性があります。
実際にカスタマイズしているサイトについては、uscesidを使用している箇所がないか確認し、使用している場合は別の方法で代替できないか検討しました。
5. Welcart拡張プラグインの確認
Welcart 2.12では、本体と同時にアップデートが必要な拡張プラグインがあります。
今回、特に確認したのは以下の3つです。
| プラグイン | 必要バージョン | 主な変更 |
|---|---|---|
| WCEX DL Seller | 3.6以上 | PDF出力などの内部処理を変更 |
| WCEX Auto Delivery | 1.8以上 | お届け先関連の処理変更・セキュリティ強化 |
| WCEX Coupon | 1.4以上 | クーポン関連の内部処理を変更 |
これらを利用している場合、Welcart本体だけを2.12へ更新するのではなく、対象となる拡張プラグインも対応バージョンへ更新する必要があります。
カスタマイズしているWelcartは特に注意
標準的なWelcartサイトについては、バックアップ後に本体・必要な拡張プラグインをアップデートし、動作確認を行いました。
一方、独自カスタマイズが入っているサイトについては、同じようには進めませんでした。
Welcart 2.12ではuscesidが廃止されているためです。
Welcart 2.12 カスタマイズ移行ガイド(公式)
テーマや独自プラグインなどで、
uscesiduscesdcuscescvget_uscesid
などを使用している場合は、アップデート前に確認が必要です。
今回の調査でも、Welcart内部の仕組みに依存したカスタマイズについては、その処理をそのまま残すのではなく、現在の仕様に合わせて別の方法で実装できないか検討しました。
制作会社などにWelcartサイトを制作してもらっていて「カスタマイズされているか分からない」という場合も、更新前に制作会社へ確認することをおすすめします。
実際に行ったアップデートの流れ
標準構成のサイトでは、おおむね以下の流れで対応しました。
- ファイル・データベースをバックアップ
- PHPなどサーバー環境を確認
- 現在のWelcartバージョンを確認
- カスタマイズの有無を確認
- WCEX系拡張プラグインを確認
- Welcart本体と必要な拡張プラグインをアップデート
- ECサイトの動作確認
単純にプラグインを更新するだけではなく、更新前の環境確認と更新後の動作確認までを1セットとして対応しています。
アップデート後に確認したこと
アップデートが完了したら、管理画面にログインできることだけを確認して終了、とはしませんでした。
今回の対応では主に、
- 商品ページ
- カート
- 注文処理
- 決済
- メール
- 会員登録
など、ECサイトとして重要な機能が正常に動作するか確認しました。
特にECサイトでは「商品ページが表示されている=問題なし」とは限りません。
カートには入るものの購入完了できない、決済でエラーになる、注文メールが送信されない、といった問題が発生する可能性もあります。
そのため、実際の購入導線に沿って確認することが大切です。
30サイト以上をアップデートした結果
今回、50サイト以上のWelcart導入状況を調査し、そのうち現在使用中の30サイト以上についてアップデート対応を行いました。
現時点では、アップデートそのものが原因と考えられる大きなトラブルは確認されていません。
ただし、これは「どんなWelcartサイトでも何も確認せずアップデートして問題ない」という意味ではありません。
標準構成なのか、独自カスタマイズがあるのか、どの拡張プラグインを利用しているのかによって、確認すべき内容は変わります。
WCEX Couponの更新ボタンが表示されず、マイページにも最新版がないケース
今回の作業で実際に少し苦戦したのが、古いバージョンのWCEX Couponを使用していたサイトのアップデートです。
WordPress管理画面のプラグイン一覧を確認しても、WCEX Couponに更新通知・更新ボタンが表示されませんでした。
Welcart公式でも、古いバージョンの拡張プラグインでは、更新方法の変更によりプラグイン一覧に更新通知が表示されない場合があると案内されています。
そこでWelcart.comのマイページにログインし、購入履歴を確認しました。
しかし、ここでも少し困りました。
マイページに最新版のWCEX Couponが表示されていなかったのです。
公式の案内ではマイページから最新版をダウンロードする流れになっていますが、今回の環境では、その時点でマイページから取得できるバージョンは最新版ではありませんでした。
実際に行った対応
そこで今回は、まずマイページの購入履歴に表示されているWCEX Couponのバージョンをダウンロードし、手動でアップデートしました。
すると、そのアップデート後からWordPress管理画面のプラグイン一覧にWCEX Couponの更新通知・更新ボタンが正常に表示されるようになりました。
あとは管理画面の更新ボタンからアップデートを進めることで、最終的に必要なバージョンまで更新することができました。
今回の流れをまとめると、
- WCEX Couponの更新ボタンが表示されない
- Welcart.comのマイページ・購入履歴を確認
- マイページにも最新版は表示されていなかった
- まずマイページで取得できるバージョンをダウンロード
- WCEX Couponを手動アップデート
- WordPress管理画面に更新通知が表示されるようになった
- 管理画面から必要なバージョンまでアップデート
- アップデート後の動作を確認
という手順でした。
古いWCEX Couponを使用している場合、「WordPressに更新ボタンがない」「マイページにも最新版が見当たらない」という状態になるケースがあるようです。
今回の環境では、マイページから取得できるバージョンを一度適用することで更新チェックが正常に行われるようになり、その後のアップデートを進めることができました。
同じ状況になった場合の一例として参考になればと思います。
※これは今回実際に対応した環境で解決できた方法です。使用中のWelcart・WCEX Coupon・PHPなどのバージョンや環境によって状況が異なる可能性があるため、作業前には必ずバックアップを取得し、最新のWelcart公式情報も確認してください。
実際に30サイト以上対応して感じた注意点
今回、多数のWelcartサイトを確認して改めて感じたのは、「Welcartを更新する」という作業だけを切り離して考えない方がいいということです。
特に、
- 事前バックアップ
- PHPなどの動作環境
- Welcart本体のバージョン
- 拡張プラグイン
- 独自カスタマイズ
- 更新後の購入・決済テスト
まで確認して初めて、アップデート作業が完了したと考えた方が安全です。
また、長期間アップデートされていないサイトでは、今回のWCEX Couponのように「そもそも最新版への更新通知が表示されない」ということもあります。
ECサイトは一度制作して終わりではなく、WordPress本体・Welcart・拡張プラグイン・PHPなどの変化に合わせて継続的に保守していくことが重要だと感じました。
まとめ
Welcart 2.12へのアップデートでは、セキュリティ強化に伴い内部の仕組みが変更されています。
今回50サイト以上を調査し、使用中の30サイト以上を実際にアップデートした中では、大きなトラブルは確認されていません。
ただし、
- 更新前にバックアップする
- カスタマイズの有無を確認する
- uscesidを利用した処理を確認する
- WCEX DL Seller・Auto Delivery・Couponの利用状況を確認する
- Welcart本体と必要な拡張プラグインを適切に更新する
- 更新後に購入・決済まで動作確認する
といった作業は重要です。
特にカスタマイズされたWelcartサイトや、長期間アップデートしていないECサイトの場合は、更新ボタンを押す前に現在の環境を確認することをおすすめします。
※この記事は2026年9月時点でのWelcart公式情報と、実際に行ったアップデート作業をもとにまとめています。Welcartや各拡張プラグインの最新版・対応環境については、アップデート時点の公式情報もあわせて確認してください。

